3つの宝箱

私にとっての3つの宝物といえるプロレス・映画・学生時代の思い出や、日々の雑感を語るブログです。

恐怖の電話

こんばんは。

若い頃独り暮らししてた時の話。

まだ携帯電話もない時代で、固定電話が唯一の通信手段でした。

仕事に出掛ける時は必ず留守番電話モードにして出かけてました。

ある日帰宅すると留守番電話のランプが、点滅していたので、再生すると聞き慣れない50代ぐらいの女性の声で
「みっちゃん?お母さんよ、電話して。」と吹き込まれてました。
完全に間違い電話だなと思いました。

その間違い電話は、その日だけでなく1週間に1回ぐらい吹き込まれていたので、私は困ったなと思いました。

ところが、ある時たまたま私が在宅の時にその電話がかかってきました。
電話の主がいつも通りに
「みっちゃん?」と話しかけてきましたので、そのタイミングで私が
「違いますよ。間違えてますよ。」と答えると電話は無言で切られました。
(良かった、これで間違いと分かってくれた。
もうかかってこないやろ。)
その時はそう思ったのですが・・・・
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間違いということを相手に告げて、もうこれで電話はかかってこないとホッとしていました。

その日から1週間後、帰宅すると留守番電話のランプが点滅していました。
(まさか)と思い再生すると
「みっちゃん?お母さん、電話して。」
例のメッセージが吹き込まれていました。

当惑すると共にゾッとしました。
(何で?俺間違いって言ったよな)
得体の知れぬ恐怖で、その日は寝られませんでした。
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それからも、やはり定期的に
「みっちゃん?」のメッセージが吹き込まれ、私はノイローゼになりそうでした。

ある時また在宅中に電話がかかってきて、留守番電話モードのまま聞いていると
「みっちゃん?」
例の電話でした。すぐに受話器をとり
「前に違うって言ったでしょ❗」 
と少し強い口調で言ったところ、最後まで私の言葉を聞く前にまた無言で切られました。

その後も例の「みっちゃん」の
留守番電話は続きました。
どうしたらいいものかと考えました。

一番簡単なのは、電話番号を変えることでしたが、それが出来ない事情がありました。
数少ない女の子の友達がこの番号を変えてしまうと連絡がつかなくなってしまうので、変えることはしたくなかったのです。

また当時は、ナンバーディスプレイもなく、こちらから迷惑電話の相手にやめてくれということも出来ませんでした。

そんな状況で「みっちゃん」の電話を受け続けていたのですが、あることに気がつきました。
それはその電話は、必ず平日の昼間にかかってきていたということです。

普通の会社員は、平日の昼間に在宅していません。あえてその時間にかけてくるということは、留守を前提にかけてきているということです。
ここに謎を解く鍵があるのかなとふと思いました。

その後も「みっちゃん、お母さんよ」の留守番電話は定期的に続いていた、ある時異変が起きました。

帰宅後また留守番電話のランプが点滅していたので(またか)と思いつつ再生しました。
すると
「みっちゃん?」いつも通りの言葉が続くと思ったのですが、その日は違いました。
「みっちゃん?」その言葉をさえぎるように背後から別の人がしゃべった言葉が録音されていたのです。

「○○さん!どこに電話してるの!電話する人いないでしょ、薬のんだの?」
その言葉で録音は終わっていました。

私はそれを聞いて謎が解けたような気がしました。
つまりこの電話をかけてきた人の娘である、みっちゃんは亡くなっているか、もう連絡がとれなくなっている。
そして、この人はそれを分かっていてあえて電話をかけてきている。
その事実を認められないのか、認めたくないのか。
おそらく私の電話番号は、以前みっちゃんが使っていたのでしょう。

この留守番電話を吹き込んでいる時だけは、みっちゃんとつながっていられるから、あえて私が留守の時に電話をかけてきていた。

おそらく今は病院か何かの施設に入っているこの人にとって、それが心の支えになっていたのでしょう。
切ないなあと思いました。
 
この留守番電話のメッセージを聞いて、流石に切なくなって電話番号を変えました。

それから半年間何事もなく日々は過ぎ、心穏やかに過ごせました。
そんな日々の午前2時。
不意に電話がなりました。私の電話の留守をつげるメッセージの後にスピーカーから聞こえてきた声は
「みっちゃん?お母さんよ。電話して。」
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最後まで読んでいただきありがとうございます。