アメリカで感じたWWFの進化とファンのシビアさ
アニマル・ウォリアーが亡くなりました。ホーク・ウォリアーも既に鬼籍に入っているためロード・ウォリアーズが二人とも、この世を去ったということです。
SNS ではアニマルの死去を嘆く書き込みが多くされています。それらの多くはウォリアーズは凄いチームだったと書き込んでいます。
おそらく日本でのウォリアーズしか、知らないファンの記憶には、ウォリアーズが相手を秒殺する姿が焼き付いているのだろうと思います。
私もウォリアーズが一時代を築いた伝説のタッグであることは否定しません。彼らがアメリカと日本で一時代を築き、ファンを熱狂させたことは事実です。
しかし私がウォリアーズを思う時には、その全盛期とは別の光景が記憶に甦ってきます。
それは、1999年のレッスルマニア15で見たウォリアーズの晩年の姿です。
この時に私は「ターザン山本と行くレッスルマニアツアー」に参加して、レッスルマニア15を見に行くために渡米しました。
この時に参加した理由はレッスルマニアを見に行くより、ターザン山本と話をしたいという気持ちが、大きくそんなにWWFが見たいという訳ではありませんでした。
したがって、アメリカンプロレスに対する知識もそんなにありませんでした。
WWFに関しては、ホーガンがトップだった頃の大味なバワーファイターばかりの団体という印象しかありませんでした。ツアーに参加した中には、私と同じ認識の人も何人かいました。
しかし、この認識が古いものでWWFが大きく進化していることを、このツアーで思い知ることになりました。
この時に観戦したレッスルマニア15は過去に私が観戦したプロレス興業の中で、間違いなく最高のものでした。
演出も素晴らしいですし、出場するレスラーが、全て自分の役割を熟知していて、一級のエンターテイメントワールドを作り上げていました。後にも先にもこんな素晴らしい興業を体験したことはないです。
WWFが大味なバワーファイターだけの団体というのは、間違った古い認識であることを思い知らされました。
話をウォリアーズに戻します。ウォリアーズはレッスルマニア当日、その本大会前のアンダーカードに出場していました。(テレビに映らない試合です。)
ウォリアーズの出場を知らなかった私と日本から来た一部のファンは喜びました。
しかし、アメリカのファンと日本から来たファンでも、アメリカンプロレスに詳しい人は白けていました。
無反応と言ってもいい冷めた反応でした。
彼らの対戦相手はオーエン・ハートとジェフ・ジャレットでした。当時の私の印象では二人ともジュニア・ヘビー級の選手という印象でした。
試合もウォリアーズが秒殺するのかなと思いました。
しかし現実は大きく違いました。まずオーエンとジェフが入場するとウォリアーズとは比べ物にならない歓声が起きて、ファンは大喜びしていました。
この時に(もしかして、この二人の方がウォリアーズより格上なのかな?)という思いを抱きました。
そんな私の違和感ともいえる思いと共に試合が始まりました。ウォリアーズがいつもの秒殺スタイルでオーエンとジェフに襲いかかった時に、会場全体に日本では聞いたことのない、コールが響き渡りました。
それは「ボーリング❗ボーリング❗」という大合唱てした。私はこのコールの意味が全く分かりませんでした。そばにいたツアー客の一人に聞くと
「ああ、これはお前らの試合はつまらない。」って意味ですよ。ウォリアーズはもう完全に過去の人なんですよ。」と教えてくれました。
私はこの言葉に驚きました。まだブーイングなら分かります。ヒールとして客を沸かせてるわけですから、それはヒールレスラーとしての存在証明と言えます。しかし「ボーリング❗」は意味が違います。
「お前らの試合は見るに値しない。」と存在価値を否定されてるわけですから。
私の驚きをよそに試合は5分程度で、ジェフジャレットがギターでホークを殴って失神させ勝ちました。その結末に会場のファンは大喜びでした。
私はこの試合結果に驚きつつも、時代が変わっていることを痛感しました。
その後日本に帰った私はスカパーと契約して、WWFを見続けました。それで改めて思ったのは、
WWFは常に進化を続けているということです。
時代の要請に合わせて常にニュースターを産み出そうと努力しているということです。
これは当時のライバル団体WCWに既存のビッグネームを取られたWWFが、そうせざるを得なかった訳ですが、その結果爆発的な人気を得ることが出来たわけです。
当然そこでのレスラーの生存競争はシビアなものになり、変化できないものは淘汰されていきました。その中にウォリアーズも含まれていたということです。ウォリアーズは色んな抗争相手とその都度ドラマを作ることが出来なかったということです。
私はそれで良かったと思います。ウォリアーズが抗争相手に合わせてスタイルを変化していけるような器用なレスラーなら、ここまでファンの記憶には残らなかったと思います。
いつも決まったパターンの試合しか出来なかったので、その分ファンの記憶に残るチームになったのだと思います。
特に日本のファンの記憶には強いウォリアーズしか残っていないのだと思います。
日本には、たまにしか来日しない特別参加がほとんどだから飽きられることもなかったのかも、しれません。
そう考えるとアメリカで10年以上も一つのスタイルで一線を張りつづけたのは、凄いことだと思います。
アニマルに哀悼の意を表しつつ、この投稿を締めくくらせていただきます。
ウォリアーズよ永遠に❗
最後まで読んでいただきありがとうございます。