3つの宝箱

私にとっての3つの宝物といえるプロレス・映画・学生時代の思い出や、日々の雑感を語るブログです。

立命館大学の思い出その11(遠い春と私だけの十字架)

私が学生の頃は、携帯電話もスマートフォンもありませんでした。
誰かに連絡するためには、固定電話にかけることでしか、連絡できない時代でした。
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今までに何回か書かせていただいたとおり、当時私には想いを寄せている憧れの女の娘がいました。
その娘とは、電話でやり取りをよくしていたのですが、前述したように当時は携帯電話などありません。
連絡するのは固定電話なのですが、その娘は当時下宿しており自分専用の電話を持っていなかったのです。そのため下宿の共有電話にかけて、彼女を呼び出してもらわないといけなかったのです。
何せ小心者の私にはなかなかハードルの高いことで、いつもドキドキしながら電話をかけたものです。
電話番号の最後の一けたを押すのも、躊躇したりしながら勇気を振り絞って電話していました。
電話がつながって、電話に出た女の娘に「○○さんお願いします。」と言うと取り次ぎの女の娘が、「○○さん電話」と呼びかけ、奥の方から「はーい。」という声が聞こえ、憧れのその娘の足音が聞こえてくると本当に逃げ出したくなるくらい緊張して、胸がドキドキしたものです。

彼女との会話は不思議と弾みました。私の方が主体となって話をし、彼女が受け手にまわることがほとんどでした。 
当時彼女に言われたことで、一つ印象に残っているのが
「よく話が飛びますね。」と言われたことです。
これは私が当時全日本プロレスを席巻していた長州ジャパン軍のように次から次へと技を繰り出すハイスパートレスリングのような会話をしていたためにそう言われたわけです。
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それに対し彼女はしっかりと相手の技を受けて、それに対応する王道の全日本プロレスのような会話をしていたと思います。

本来噛み合うことのない二人の会話は不思議と噛み合い、時間があっという間に過ぎたものでした。
村上龍が小説「69」の中で「可愛い娘といるだけで、どうしてこんなに楽しいんだろう。」と書いていましたが、本当にそんな風に思えました。
いつも彼女に電話する前は、会話がとぎれないようにと事前に話のネタを幾つか書いて用意していましたが、一度も使うことはありませんでした。そんなものがなくとも会話が続いたからです。

当時長州と全日本プロレスで抗争していた天龍が、「長州との試合では自分でも思っていなかった技が出るんだ。」と語っていましたが、同じように私も
「彼女との会話では、自分でも思っていなかったような話が出るんだ。」と思ったものです。
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今にして思えば、私が会話の主導権を握っているのではなく大人の彼女に会話をリードされていたのだと思います。
そう彼女はまるで往年の名レスラー、ニックボックウインクルの「相手がワルツを踊ればワルツを、ジルバを踊ればジルバを」の言葉のように上手く私に合わせつつ、主導権を握っていたのだと思います。
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結局片思いのままで、私の想いは成就することはありませんでした。キャンパス内の緑の公衆電話から彼女の下宿に電話をかけることが、多かったため今でも緑の公衆電話を見ると切なく当時を思い出すことがあります。
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本来は彼女の人生に接点のなかった私が、無理に接点を作り彼女に迷惑をかけたことを申し訳なく思っています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。