恐怖の漫画喫茶
こんにちは。
今から30年弱前の話です。
友人と夜に十三に飲みに行くことになりました。
十三というのは、大阪のディープタウンで、私が大好きな 街です。
この街全体の独特の雰囲気が、何とも言えず好きなので飲みに行くなら十三によく行ってました。
その日待ち合わせ時間より、かなり早目に十三に着きました。
(どうやって、時間を潰そうかな?)
そう考えていると、駅前の雑居ビルの前の黄色いのぼりが目に入りました。
そこにはこう書かれていました。
「マンガ喫茶30分150円」
(これは安いな。)
そう思いそこで時間を潰すことにしました。
当時は、 まだマンガ喫茶自体が少なくて、あっても料金的には、もっと高いのが普通でした。
雑居ビルの三階が受付になっており、外から除くと、客が3人ぐらい見えました。
受付に入ると志賀勝のような人相の男が、無愛想に
「いらっしゃい。」と挨拶をしました。
料金は後払いでした。
中に入ってまず驚いたのは、マンガ本が全く分類されておらず、本箱にも本が逆さまに並べられてたり、斜めになっていたり、ひどいありさまでした。
私は
(流石十三のマンガ喫茶や。)と妙に感心していました。
さらに外からでは気がつかなかったのですが、3人いる客も「仁義なき戦い」の山守組の若い衆みたいな人相で、そのことにも
(流石十三や、マンガ喫茶に来る客もワイルドや。)
と呑気に感心していました。
その後に私をどんな事態が待ち受けてるかも知らずに。
ワイルドな雰囲気の中で、漫画を読んでいました。
そろそろ30分経ちそうになったので、店を出ることにしました。
受付で会計をお願いすると志賀勝が、ぶっきらぼうに
「5150円」と言いました。
私は思わず
「えっ?何で?」と言いました。
すると志賀勝が、無言で受付のところに貼られている画用紙を指差しました。
そこには大きく30分150円と書かれていましたが、その一番下に小さく別途席料30分5000円と書かれていました。
私は思わず
「こんなん、おかしい。」と叫びました。
すると今まで無言で本を読んでいた他の客3人が、立ち上がりました。
その瞬間に
(あっ!こいつらグルやな。)と察知すると同時に身の危険を感じましたので、一旦5150円を払って店を出ました。
店を出た後は、はめられた悔しさでいっぱいでした。
(このままにはしておけない。)
そう強く思いました。
そう思い、とりあえず近くの交番に行くことにしました。
商店街を抜けたところの交番にすぐ行って、事の経緯を言って相談しました。
二人お巡りさんがいたのですが、私の話を聞き終わると一人が、
「民事不介入と言って、警察は私人間の争い事には口を出せないんですよ。」と淡々と言いました。
私は少し憤って
「いや、俺はね自分のためだけに言ってるんじゃないんですよ。こういう店を野放しにしておいたら、また被害者が出るでしょ?」と言いましたが、私の話を聞き終わらないうちにもう一人が、
「でも入口に5000円のこと書いてあるんでしょ?だったら確認してない方も落ち度があるしね。」
と冷たく言い放ちました。
それを聞いて私は
「分かりました。あなたたちに何かをしてもらおうとは思いません。今からもう一度私が店に言って直接抗議しますので、立ち会ってもらえませんか。」
と再度言ったところ
「いや警察は民事不介入だから。」と同じことを繰り返して言われました。
(もう言っても無駄やな。)
そう判断し交番を出ました。
このままでは、自分の気持ちがおさまらないので一人で再度その店に行くことにしました。
別に5000円を取り戻そうと思ったわけではなく、何かを言ってやらないと気がすまなかったからです。
再度店の受付に行くと志賀勝が座ってました。
あまり近づきすぎない位置で
「5000円っておかしいやろ!」と
言うと志賀勝が
「受付に書いてるやろ」と返してきたので
「それやったら最初から言えや!こんなことしとったらバチ当たるぞ!」
それだけ言って逃げるように店から離れました。
ささやかな抵抗ですが、何かを言わずにはいられませんでした。
若い時の恥ずかしい思い出です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。